「オープン初週はにぎわったのに、2週目からは目に見えて人が減った」「告知は開催前にすべて出し切ってしまい、会期中に打つ手がない」。会期が数週間〜数か月あるイベントを担当していると、こうした悩みに直面することが少なくありません。
SNS広告や練習問題、謎付きフライヤーなど、イベントの告知について語られるのはたいてい「開催前」の話です。しかし長い会期のイベントでは、本当の勝負は開幕したあとに始まります。この記事では、会期中にもう一度話題を起こすために、告知を「開幕・中盤・終盤」の3回に分けて山をつくる考え方を、謎解きイベントの企画・運用を手がけてきたハレガケの実例とデータを交えて解説します。
「初週がピークで、あとは下がるだけ」になっていませんか?
会期の長いイベントの来場者数をグラフにすると、開幕直後に大きな山ができ、その後はゆるやかに下がり続ける形になりがちです。開催前に告知を集中させると、その効果は「開幕」に向けて一気に使われます。開幕の山が高いほど、そのあとの落ち込みも目立ちやすくなります。

上の図のグレーの線が「告知を開催前に出し切る型」、オレンジの線が「会期中に山を3回つくる型」です。会期の長さや企画の中身が同じでも、告知の打ち方を変えるだけで、中盤以降の動きは大きく変わります。まずは、なぜ会期中に集客が落ちるのかを整理しておきましょう。
なぜ会期中に集客が落ちるのか?3つの原因
① 告知が開催前に集中している
プレスリリース、SNS投稿、広告、館内掲示。告知の手段の多くは「開催決定」「いよいよ開幕」というタイミングに集中しがちです。その結果、開幕後には新しく発信する材料が残っておらず、イベントの存在が少しずつ忘れられていきます。
② 会期中に「新しいニュース」がない
メディアやSNSで取り上げられやすいのは、いつの時代も「新しい情報」。開幕から内容が変わらないイベントは、2回目以降の発信で「また同じ話」と受け取られてしまいます。会期中に話題を起こすには、発信する側が意図して「ニュース」をつくる必要があります。
③ 「いつでも行ける」と後回しにされる
会期が長いことは、来場者にとって「急がなくていい理由」にもなります。興味を持った人でも「そのうち行こう」と予定を先送りし、気づけば会期が終わっていた、ということが起こります。この「後回し層」をいつ、どう動かすかを決めておくことが、中盤以降の集客の鍵になります。
告知の山を3回つくる設計:開幕・中盤・終盤
3つの原因に対応するのが、告知を「開幕・中盤・終盤」の3回に分け、それぞれで山をつくる設計です。山ごとに役割と出すネタが異なります。
開幕の山:参加者の声と写真を「二次告知」に使う
開幕直後の山は、開催前の告知の勢いでつくられます。ここで意識したいのは、来場した人の反応を次の告知の材料にすることです。「最後の謎で鳥肌が立った」「親子で夢中になった」といった参加者の声や、楽しそうにプレイする様子の写真は、主催者がどれだけ説明するよりも「行ってよかった」が伝わります。
初週の参加者数やSNSの投稿件数も、「すでに◯人が挑戦中」という形で発信できます。開幕前は「どんなイベントか」を伝える告知、開幕後は「実際どうだったか」を伝える告知、と役割を切り替えるのがポイントです。
中盤の山:途中から新しい要素を出す
来場が落ち着いてくる中盤には、「新しいニュース」を用意します。謎解きイベントであれば、次のような方法があります。
- 会期の途中から追加の謎や「第2章」を解放する
- クリア者数やクリア率を途中発表し、「まだ挑戦していない人」に呼びかける
- 季節の行事や周辺の見ごろ(桜・紅葉など)に合わせて、告知や広告を再投下する
新しい要素は、初めての人を呼ぶだけでなく、一度参加した人がもう一度足を運ぶきっかけにもなります。「前回の続きが遊べる」という情報は、既存の参加者にとって何よりのニュースです。
終盤の山:「残り◯日」「限定特典は◯日まで」で後回し層を動かす
最後の山は、「いつでも行ける」と思っていた後回し層に向けたものです。「開催は残り14日」「クリア特典の配布は◯日まで」と締切を具体的に示すと、先送りしていた予定が「今週末行こう」に変わります。
このとき、締切をつくる「理由」を企画側で用意しておくことが大切です。会期末にしか手に入らない特典や、最終週だけの限定要素があれば、終盤の告知は単なるリマインドではなく、行く理由のあるお知らせになります。
会期中に出すネタは、企画段階で仕込んでおく
ここまで読んで「中盤に追加謎を出せばいいのか」と思われたかもしれません。ただし、会期中のネタはあとからつくるのでは間に合いません。
たとえば追加の謎や第2章を出すには、本編とのつながりを考えた謎の制作、デバッグ(テストプレイ)、キットやWebページの準備が必要です。「来場が落ちてきたから何か出そう」と動き出しても、形になるころには会期が終わってしまいます。クリア特典を終盤の締切に使う場合も、特典の制作と配布の段取りは会期前に決めておく必要があります。
そのためハレガケでは、企画の段階で「開幕・中盤・終盤それぞれに何を出すか」を決め、制作スケジュールに組み込んでいます。参加者の写真を告知に使う場合の許諾の取り方や、クリア者数を集計する仕組みも、このタイミングで設計しておきます。告知は広報の仕事、企画は制作の仕事と分けず、最初から一つの計画として考えることが、会期中の山をつくる一番の近道です。
【事例】鎌倉まるっと謎さんぽ:会期中の再告知で、販売数が月平均の約2.8倍に
実際に、会期中の告知の打ち方で数字がどう動くのかを、ハレガケが企画・運営する「鎌倉まるっと謎さんぽ」の例で紹介します。鎌倉の小町通りや長谷寺、七里ヶ浜を巡る周遊型の謎解きで、2025年5月29日に発売し、現在も販売中です。
課題:通年販売で「いつでも遊べる」からこそ、話題が途切れやすい
販売期間の決まっていない通年型のコンテンツは、会期の長いイベントの代表例です。「いつでも遊べる」ことは魅力である一方、発売の話題が落ち着くと、わざわざ今行く理由がなくなってしまいます。そこで、発売時に告知を集中させたうえで、観光の旬に合わせて再び告知の山をつくる計画を立てました。通年販売のため「終盤」はありませんが、開幕と中盤の山を意図してつくった例です。
施策と結果①:発売直後の3週間に広告を集中させる
発売前後の約3週間(2025年5月26日〜6月14日)は、X・Instagramの広告、インフルエンサーによる紹介、投稿キャンペーンを集中的に実施しました。広告を止めた翌週(6月15日〜21日)と比べると、広告を出していた最初の週(5月26日〜31日の6日間)は特設サイトの閲覧数が約6.9倍、オンラインでの購入数が約2.6倍になりました。広告を続けた2週目・3週目も、購入数は広告なしの週の約1.3〜1.5倍を保っています。

発売直後の話題性も重なってはいますが、広告をやめると数字はすぐに落ち着くこともわかります。開幕の山は自然には続かず、次の山は意図してつくる必要がある、ということです。
施策と結果②:紅葉シーズンに合わせて告知を再投下する
2つ目の山は、鎌倉に観光客が増える紅葉シーズンに合わせました。10〜11月にX・Instagram・Google・LINEの広告を再び出したところ、11月の販売数は発売月の6月を上回り、発売からの12か月(2025年5月〜2026年4月)の月平均の約2.8倍になりました。

反対に、観光の旬から外れた9月にGoogle・LINEの広告だけを出したときは、特設サイトの閲覧は大きく増えたものの、販売数は月平均の約0.6倍と、平常月並みにとどまりました。告知は「量」だけでなく、来場者が動きたくなる「時期」と重ねてはじめて結果につながります。今回は広告を使いましたが、公式SNSや館内掲示での再告知でも考え方は同じです。山の位置は、地域の季節や行事のカレンダーと合わせて決めると効果を出しやすくなります。
そのまま使える「会期中の告知カレンダー」テンプレート
ここまでの内容を、会期中の告知計画に落とし込めるカレンダーの形にまとめました。開催前に加えて、開幕・中盤・終盤のそれぞれで「山の役割」「出すネタ」「主なチャネル」「企画段階で決めておくこと」を一覧にしています。

使い方のコツは、一番下の「企画段階で決めておくこと」の行から埋めることです。追加要素の解放日や特典の締切日が決まれば、そこから逆算して告知の日程が自然に決まります。会期の真ん中と残り2週間の時点に印をつけ、その前後に告知の予定を置いていくと、計画の抜け漏れを防げます。最後に、計画の段階でよくいただく質問にお答えします。
会期中の集客でよくある質問
会期が2〜3週間と短い場合でも、山を3回つくれますか?
つくれます。会期が短い場合は、山を「週ごと」に置くイメージで考えます。たとえば3週間の会期なら、1週目の週末に参加者の声、2週目に追加要素やクリア者数の発表、3週目に「今週末で終了」の告知、という形です。会期が短いほど準備期間に余裕がないため、出すネタは開幕前にすべて用意しておくことをおすすめします。
会期中の告知に、追加の予算はかかりますか?
内容によります。参加者の声の発信、クリア者数の途中発表、「残り◯日」の告知などは、公式SNSや館内掲示を使えば大きな費用をかけずに実施できます。追加の謎や第2章の制作、広告の再投下には費用がかかりますが、企画段階から本編と一緒に設計すれば、あとから単独で発注するより効率よく準備できます。予算に合わせて、どの山にどれだけ配分するかを、最初に決めておきましょう。
会期中の告知は、主催者側で運用しなければいけませんか?
すべてを主催者側で担う必要はありません。ハレガケでは、謎解きの企画・制作に加えて、プレスリリースの配信やSNS告知、会期中の追加施策の設計まで一緒にご相談いただけます。施設の公式アカウントで発信する場合も、投稿の文面や素材をご用意できます。
まとめ:告知は「開催前に出し切る」から「会期中に山を3回つくる」へ
会期の長いイベントが中盤から失速する原因は、多くの場合、企画の魅力ではなく「告知の配分」にあります。
- 開幕:参加者の声・写真で「行ってよかった」を見せる
- 中盤:追加の謎や第2章、季節に合わせた再告知で、もう一度話題にする
- 終盤:「残り◯日」「特典は◯日まで」で後回し層の背中を押す
そして、これらのネタは企画段階で仕込んでおくことが欠かせません。
次のイベントを企画するときは、ぜひ上の告知カレンダーを使って、会期中のどこに山を置くかから考えてみてください。
「うちのイベントなら、会期中にどんな山がつくれる?」「告知や運用まで含めて相談したい」。そんな段階からのご相談も歓迎です。
謎解きプラスでは、企画・制作から告知・会期中の運用まで一緒に設計します。お気軽にお問い合わせください。
















